慢性腰痛の原因と痛みのおこるメカニズム

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慢性腰痛の原因と痛みのおこるメカニズム

日本で多くの人が悩んでいる慢性腰痛。そのうちはっきりとした原因のわかる腰痛は15%程度と言われています。ですが、特定した原因はわからない場合でも、痛みのおこるメカニズムが少しずつ解明され、慢性腰痛の苦しみから解放される可能性も広がってきています。今回は、慢性腰痛の原因、痛みのおこるメカニズムと痛みに対する取り組みをご紹介します。

痛みの原因

慢性腰痛に限らず、頭痛、肩痛、ひざ痛、など、神経や関節や筋肉におこる痛みをまとめて「疼痛(とうつう)」と呼びます。この疼痛のおこる原因は、大きく分けると3つに分類されます。

  1. 体の組織に原因がある(侵害受容性疼痛)
  2. 痛みの信号を脳に伝える神経に原因がある(神経障害性疼痛)
  3. 脳に影響を与える心に原因がある(心因性疼痛)

これら3つの原因は単独でおこるより、複合されておこる場合が多くなっています。一番初めに痛みを感じるきっかけは、体のどこかが実際に炎症をおこして痛んでいる場合が多いです。しかし、それが慢性化してしまう原因となるのは、痛みの信号を脳に伝える神経が興奮し過ぎていたり痛みの信号を受け取る脳が敏感になり過ぎていたりすることが大きいと言われています。

そして、体の組織、神経、脳に対して意外に強く影響しているのが、「心」です。とくに慢性腰痛は心の影響が大きいとされ、慢性腰痛と精神的なものが切り離せないことは、医療現場でも広く受け入れられる事実となっています。

体の組織におこる慢性腰痛の原因

体の組織におこる慢性腰痛の原因
慢性腰痛の中で原因が明確なものとしては、一般的に以下のような病気に基づくケースがあるとされています。

  • 腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア
  • 脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)
  • 腰部圧迫骨折
  • 腎臓の病気
  • 泌尿器系・婦人科系の病気

腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア

椎間板ヘルニアは、骨と骨の間のクッション役である椎間板に亀裂が入り、内部の組織が飛び出る病気です。この飛び出た部分をヘルニアと呼び、腰のヘルニアは腰椎椎間板ヘルニア、首のヘルニアは頸椎椎間板ヘルニアと区別されています。

ヘルニア自体に痛みはありませんが、飛び出た方向によっては神経を刺激することがあり、そのとき痛みがおこります。腰椎椎間板ヘルニアの主な原因はスポーツや仕事、日常生活での腰への過度な負担とされ、40代頃までの若い人に多い病気です。

昔は、椎間板ヘルニアは治らず、ヘルニアが神経を刺激し続けるので慢性的に痛むのが当たり前と考えられていました。そのため、手術でヘルニアを取り除くことが積極的に行われていた時代もあります。しかし最近になって、ヘルニアがあってもまったく痛みを感じない人や、放置していたヘルニアが自然治癒するケースがあることがわかり、よっぽどの場合を除き、手術はしない方向になっています

緊急に手術が必要なのは、ヘルニアが重要な神経を圧迫し、排尿や排便に支障がでるとき、足にマヒがおこる危険性のあるときです。それは整形外科で検査をすれば診断がつきます。

脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)

脊柱管狭窄症は、背骨の神経の通り道である脊柱管という管が狭くなり、中の神経が圧迫されて痛みやしびれがでる状態です。50代以上の人におこりやすく、年齢による変化が主な原因です。内科の病気や遺伝性の病気が原因となるケースでは、若い人にもおこります。

年齢による変化は、ある程度防げない部分があります。若い頃に比べ筋肉や周囲の組織も弱くなり、脊柱管は狭くなりやすくなります。しかし、同じ脊柱管狭窄症を持ち、同じレベルの組織の老化があっても、痛みの感じかたには大きな個人差があると言われています。

腰部圧迫骨折

閉経をむかえた女性は、ホルモンの変化によって骨の密度が下がりもろくなります。周囲をとりまく筋肉も年齢とともに弱くなるため、立っているときに上半身を支える腰の骨に負担がかかり、もろくなった骨がつぶれるように折れてしまうことがあります。ケガによる骨折に比べ激しい痛みがおこりにくく、ただの腰痛だと感じる人も多いようです。圧迫骨折は整形外科で検査すれば診断がつき、治療をすることができます。

腎臓の病気

腎臓は、ちょうど腰のあたりに左右1つずつある臓器です。体液をろ過して正常に保つ大切なフィルター役をしています。この腎臓に何らかの異常がおきると、腰に痛みを感じることがあります。腎臓の病気には様々なものがありますが、症状としては腰痛の他に、発熱、全身の疲れ、尿がにごるなどの変化が同時におこるケースが多いと言われています。腎臓の病気は、内科での血液検査や尿検査で見つけることができます。

泌尿器系、婦人科系の病気

腎臓と同様に、腰回りや骨盤内にある膀胱や尿管、女性の場合は卵巣や子宮に何らかの異常がおこっても、腰に痛みを感じることがあります。尿に変化があったり血が混じったり、生理以外の不正出血をするようなら、泌尿器科や婦人科で調べてもらう必要があります。

体の組織に特別な異常が見つからない慢性腰痛(非特異的腰痛)

体の組織に特別な異常が見つからない慢性腰痛(非特異的腰痛)
ここまでに紹介したように、あきらかな原因のある腰痛は元になる病気を治療しなければいけません。しかし、ヘルニアや脊柱管狭窄症がある程度落ち着き、それほどの痛みはでないと思われる状態になってもまだ、慢性腰痛の痛みに苦しむ人がいます。また、初めから特別な組織の異常や病気は見つからず、原因のわからない腰痛が続く人が数多くいます。

それら原因のわからない腰痛はまとめて非特異的腰痛と呼ばれ、腰痛を訴える人の85%がこれにあてはまると言われています。

神経障害性疼痛とは?

疼痛の原因として2番目にあげられている神経障害性疼痛ですが、これによる慢性腰痛も、実は非特異的腰痛の1つです。「神経障害性」という名前だけを見ると、神経に何かの病気があるような感じがしますよね。ですが、病院で検査してわかるような傷が神経にあるわけではありません。

神経障害性の慢性腰痛としては、ヘルニアや脊柱管狭窄症や腰のケガの治療後に残っている痛みやしびれがあげられます。

ヘルニアや脊柱管狭窄症の場合、神経を圧迫していた部分を手術で切除し、画像上は痛みがおこらないはずの状態になっているのに、本人が感じる痛みが軽減されないケースがあります。また、腰にケガをし、それが完治したにも関わらず、痛みやしびれだけがおさまらないということもあります。

神経障害性疼痛のおこるメカニズム

痛みの原因が取り除かれた後にも痛みが続く理由としては、神経の異常な興奮が考えられています。長期間痛みにさらされた神経は疲労し正常な働きができなくなります。そのため、刺激を受けなくなった後にも間違った情報をキャッチし、痛みの信号を脳に送り続けてしまうのではないかと言われています。

神経障害性の慢性腰痛の治療

神経障害性の慢性腰痛は病院の検査でわかるものではありませんが、医師が経過や患者さんの訴えをきき、判断します。この痛みには一般的な鎮痛剤が効きづらいため、神経の興奮をしずめる薬や神経ブロック注射、漢方薬など、その人の状態や希望にあわせて治療法が選択されます。心因性の慢性腰痛と同様に、痛みに対する恐怖や不安を取り除く精神的アプローチも有効だと言われています。

心因性の慢性腰痛

心因性の慢性腰痛
神経障害性の慢性腰痛は、何らかの病気やケガでおこった痛みがきっかけとなって始まると考えられています。一方、心因性の慢性腰痛は、痛みのきっかけそのものが見当たりません。

また、たしかに痛みの原因となり得る異常はあるものの、本人が感じる痛みの度合いが実際の状態よりも大きすぎる場合も含まれます。

心因性の腰痛は、痛みを感じる脳におこった異常と考えられています。脳に異常と言っても、特別な病気や障害というわけではありません。緊張したときにお腹が痛くなる経験をしたことのある人は多いと思いますが、あれは緊張によって脳の働きが上手くいかなくなり、痛む理由のないお腹を痛いと感じてしまっているわけです。

慢性腰痛も同じで、実際の腰や体には特別な異常はないのに、精神的な緊張やストレスによって脳の働きが上手くいかなくなり、実際には無いはずの痛みを感じてしまうのです。

慢性腰痛の苦痛から解放してくれる脳内麻薬の存在

慢性腰痛を抱え、様々な原因や治療法を探し続けているという人も多いと思います。情報を頼りにあれこれと試し、病院や治療院をめぐり、それでも全然よくならない…辛いですよね。それが年齢による変化や生まれ持った骨格によるもので治しようがないと言われたとしたら…なおさら辛いですよね。

しかし、私たちの脳には本来、慢性の痛みをカバーし日常生活に支障がでないようにする脳内麻薬のシステムが備わっています。同じ病気や障害があっても、痛みの感じ方に大きな個人差がでるのはそのためです。

痛みの原因を追究し思いつめるより、原因はさておき痛みを感じにくくするような脳の状態にしてしまえばいい、最近原因のはっきりしない慢性腰痛に対しては、そのようなアプローチが有効であることがわかってきています。

痛みを感じやすくなる理由

脳が痛みに敏感になりすぎる理由としては、生まれ持った繊細さの他に、不安、疲労、不満、緊張、プレッシャーなど、脳が疲れるような精神的な何かを抱えてこみ過ぎてしまうこととされています。

腰痛は本来意外と簡単なことでもおこり、冷え、筋肉疲労、気圧の変化、姿勢の影響など、一時的な痛みの原因は日常に転がっています。このとき、「今日は寒いから腰が痛いな、お風呂に入ろう」とか、「腰に負担がかかる姿勢を続けすぎたかな、少しストレッチをしよう」のように考える人は、痛みは慢性化しません。

しかし、「痛いのは何かの病気に違いない」「こんな痛みがあると困る。何とかしなければ」のように思いつめてしまう人は、痛みが緊張や不安を呼び、さらに痛みが増す悪循環におちいり、無意識に自分で痛みを強めてしまうことがあります

また、心の負担はそれを発信する手段がないため、本人が無意識の精神的ストレスは、体が痛みを変わってその危機を知らせようとします。全身どの部位が痛むかは人によって違いますが、中でも腰は、無意識の心の負担がでやすいと言われています。

慢性腰痛へのアプローチ

神経の興奮や精神的な影響が大きい慢性腰痛には、精神科のアプローチが有効な場合があります。しかし突然精神科と言われても、とまどう人も多いですよね。そこで今は、整形外科と精神科が組んで慢性腰痛の治療を行う病院も増えています。

精神科といえば、特別な病気を治療するところというイメージも強いかもしれませんが、それはひと昔前の話。現在は、他の病気で入院した患者さんの精神的フォロー、痛みの続く人、眠りが浅くて困っている人への対処など、日常的な様々な場面に精神的アプローチを活用します。

治療には必ず薬を使うとは限らず、中心は「認知行動療法」という精神療法です。簡単に言うと、ストレスをまねきやすい物事の受け取り方や考え方のクセを見つけ、楽な方向へ導く方法です。

認知行動療法は慢性的な痛みの他、不安障害やうつ状態、くり返す内科の病気などに対しても科学的な効果が実証されています。

自分でできる原因不明の痛みへの取り組み

とはいえ、病院にいってまで精神的なフォローをうけることに抵抗があるという人も多いかと思います。ここでは、自宅でできる痛みへの取り組みをご紹介します。

○日記をつける

○日記をつける
日記療法は、実際に大学病院で慢性腰痛の治療として行われています。痛みがあるとどうしても痛みのことにばかり気をとられ、行動のすべてを痛みに結び付けてしまいがちになります。そこで、痛みのことはさておき、日常でおこった出来事、自分の感情などを、痛みと切り離した視点で書いていきます。

文章を書くのが苦手な人は、適当なメモでも話し言葉のような文体でも、なんでもかまいません。とにかく痛みから離れて現実の出来事や自分の心の状態の方に目を向けていくのが目的です。

○日記を書くときのポイント

病院でのやり方は、嫌だったことだけを書く、反対に楽しかったことだけを書くなど場所によって違いますが、自分でやる場合は、両方を書くのが一番おすすめです。

  • 自分がストレスに感じやすいことは何か
  • 一日の中で一番嫌だったこと(痛み以外)は何か
  • そのとき自分はどう感じたか(腹がたった、不安が強くなった、悲しかったなど)
  • 自分が楽しいと感じることは何か
  • 一日の中で良かったと思うことは何か
  • 自分がよく頑張ったと感じることは何か
  • 誰かに感謝したことは何か

痛みにとらわれていた視点を少し変えて自分の日常を振り返ってみると、痛みとは関係のない部分で様々な出来事があり、たくさん感情があるということに気づきます。

マイナス面は、それを書いて気を晴らそう!ということではなく、自分のとらえ方や考え方や行動の中に、自分自身を追い込んでしまうクセがないかを見つけ、少しでも負担を減らす方法を考えるきっかけにします。

プラス面は、痛みがあってもできることはあり、嬉しさや楽しさを感じる心は失われないことを自分に思い出させるきっかけになります。また、感謝の気持ちは、痛みを緩和させるホルモンを増やすことが知られています。

ただ、無理をして前向きな言葉を並べる必要はありません。楽しいなんて思えない、感謝なんてできない、そういう気持ちも正直に書いていきます。頭であれこれ考えず、素直な言葉を並べてみましょう。誰に見せるわけでもないので、どんな変な内容でも大丈夫です。書けなければ書けないまま、一言しか書けないならそのまま、日記を書くそのものが目的というより、痛みで見えなくなった出来事や自分の感情をかえりみようとすることに、痛みをやわらげる効果があると言われています。

まとめ

まとめ 慢性腰痛の原因と痛みのおこるメカニズム
慢性腰痛の原因、原因のわからない痛みのおこるメカニズムと痛みに対する取り組みをご紹介しました。痛みは辛いですが、自分にかかった何らかの負担に気づいてもらうための大切なサインでもあります。痛みが辛いとき、「この痛みをなんとかしよう!」と力が入ると、筋肉も神経も脳も心も緊張して疲れ、よけい痛みが強まります。まずはその部分に手をあて、呼吸をゆっくりしてみてください

それだけでも患部の血行がよくなり、リラックスして痛みは緩和されるそうです。

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