
- 最近、頭痛やめまいが頻繁に起こる
- 身体の凝りもひどいし、立ち上がった時や、起き上がった時にふらふらする
- なんとなく身体がすっきりしない……
このような症状に悩まされているなら、もしかしたら自律神経失調症かもしれません。
現在、国内で自律神経失調症と診断された患者数は約65万人といわれています。自覚していない患者はその10倍と言われており、増加傾向にあります。つまり、珍しい病気ではないということです。
でも、いったい「自律神経失調症」とは、どんな病気なのでしょうか? 何が原因なのでしょうか?
今回は、自律神経失調症について学びましょう。
目次
自律神経の働き
自律神経は、私たちの体とどう関わっているのでしょうか。まずは自律神経について簡単にご説明します。
自律神経とは?
私たちは、歩いたり何か物を取ったりという動作を普段意識的に行っています。一方、心臓を動かしたり消化活動をしたり、ということは意識してもコントロールができません。そのような生命維持に絶対必要な行為は体が自動的にやっていますよね。その重要な仕事を担っているのが、自律神経系と呼ばれる一連の神経達です。自律神経系は、ホルモンによる内分泌系と協調し、私たちの体を一定の状態に保ってくれているのです。
自律神経系には、交感神経系に属するものと副交感神経に属するものがあります。この2つは、1つの器官に対して同時進行で働くことが多く、お互いにバランスを保っています。交感神経は主に休息や消化・吸収・細胞の修復などの生体維持機能に深く関わります。仕事や家事をしているときには交感神経が優位となって適度な緊張状態となり、休息や食事・睡眠のときには副交感神経が優位となってリラックス状態になります。この2つが上手くバランスをとってくれてこそ、健康な生活の流れが可能なのです。
副交感神経系 | 体の部位 | 交感神経系 |
---|---|---|
リラックスさせる | 精神 | 活発に高ぶらせる |
ゆるやかで深い呼吸 | 呼吸器官 | 速くて浅い呼吸 |
ゆっくりと打つ | 心臓 | 速く打つ |
ゆるやかで深い呼吸 | 精神 | 精神 |
拡がって血圧は下がる | 血管 | 収縮して血圧が上がる |
活発になる | 消化・排泄器官 | 抑制される |
交感神経の働き
交感神経は脳と身体を動かすのに適した身体にします。身体と心が気持ち良く快適に過ごせる身体にしてくれるということです。脳も筋肉も、働くには糖や酸素が必要になります。糖や酸素は、血液によって全身に運ばれていきます。ですから、血液をより遠くへ運べるように血圧を上げたり、心臓の動きを早くしたりします。
交感神経は、労働、運動、興奮、緊張、恐怖、危機感などの時に働きます。交感神経は太陽が昇るとともに少しずつ活発になり、昼間にピークがやってきて、夕方から夜にかけてだんだん徐々にやわらいでいきます。日が暮れ、眠りにつくころには、交感神経は徐々に働かなくなっていきます。そして、血圧も下がり、心臓の動きもゆっくりになっていきます。
副交感神経の働き
副交感神経は、心が落ち着いている状態。つまり、リラックスした状態の時に働いています。
身体は見た目では働いていない時でも、常に体内で動きがあるため、修復しないといけない部分はあります。しかし、副交感神経が働いている時にしか大きな修復はできません。病気になったら、眠ることが一番の薬だと言われるのはこのためです。
眠ると働くのが、副交感神経で、逆に眠らなかったり休まなかったりすると、副交感神経は働きません。そのような生活を続けると、身体を修復する大切な時間がなくなり、自律神経失調症を引き起こします。この副交感神経が働かなくなってしまうからです。
副交感神経は、太陽が沈み、夜になるにつれて、少しずつ働きが活発になります。つまり、心身ともにリラックスして修復に入ろうします。そして、夜眠っているときに働きがピークになります。
副交感神経は、太陽が昇るとともに、少しずつ働かなくなってきて昼間はあまり働いていません。
つまり、朝起きて、夜眠くなるのは、昼間は交感神経の働きによって、身体の動きや思考回路も活発になり、夜はその日中の心身の疲れを癒すために副交感神経が働くというわけです。
自律神経失調症とは?
交感神経と副交感神経がともに機能を維持しながら、状況に応じて上手くバランスをとってくれていれば、適度な活動と休息が行われ、健康で充実した生活をおくることができます。しかし、何かの理由でこのバランスが崩れてしまうと、生活や体に様々な支障が出てくるようになってしまいます。そのような状態を『自律神経失調症』と呼びます。
自律神経失調症の症状
- 疲れが取れない
- 眠れない、眠り過ぎる
- 食欲が無い、あり過ぎる
- 胃の不調
- 便秘、下痢
- やる気がおこらない
- 体がだるい
- ほてり、めまい
- 冷え、のぼせ
- 精神の落ち込みが続く、常にイライラする
自律神経失調症のタイプ
とても多彩な症状のある自律神経失調症ですが、それは、バランスの崩れ方にもタイプがあるからです。交感神経が優位になりやすい、副交感神経が優位になりやすい、全体の働きが悪いなどはある程度生まれ持った体質もありますが、それに加えて様々な原因が考えられます。
交感神経優位型
現代もっとも多いタイプです。常に交感神経が高く働いて緊張状態が長く続き過ぎてしまい、休息が上手くできなくなります。不眠、疲労感、血行不良、冷え、食欲がなくやせる、食欲が無いのに食べ過ぎてしまう、高血圧、イライラがひどいなどの症状が出てきます。
忙しすぎる、ストレスが多い、いつもスマホやパソコンをいじって脳が興奮しているなどが原因でおこりやすくなります。
副交感神経優位型
リラックス方向の副交感神経が優位と聞くと何だかいい感じがしますが、いき過ぎるとやはり問題がおきます。眠り過ぎでなかなか起きられない、体がだるい、動きが鈍く仕事や家事が進まない、むくみ、それほど食べていないのに太る、食欲があり過ぎる、などの症状が出てきます。また、副交感神経優位型の人にはアトピーや花粉症などの呼吸器系疾患が多いことも知られています。
体質的なものが大きいですが、刺激の無い生活や活動不足によって引き起こされることもあります。
自律神経低下型
交感神経・副交感神経、ともに活動がダウンしてしまっている状態です。何をするにも元気が無く、かといってリラックスができるわけでも無く、生活にメリハリがありません。年齢とともに自律神経の活動は落ちますが、大きな悲しみやショックがあったとき、ストレス状態が長く続き過ぎたときにも起こります。また、食生活が悪く栄養が不足してなる場合もあります。
自律神経失調症を引き起こす【5つの原因】
このように、自律神経失調症にはいくつかのタイプがあります。原因もさまざまではありますが、代表的なのは下記の5つです。
原因1:過度なストレス
仕事などの社会的ストレスや人間関係のストレス、精神的な過度のストレスを抱えることで、自律神経失調症を引き起こす場合があります。
原因2:生活リズムの乱れ
夜更かしや夜勤勤務など、不規則な生活リズムを続けることで自律神経のバランスが崩れてしまいます。
原因3:環境の変化
転職や引っ越し、結婚や出産などの新しい環境の変化で緊張感が増すことで、ストレスを感じやすくなります。
原因4:女性ホルモンの影響
妊娠や出産、更年期などのホルモンリズムの変化が自律神経の働きに影響しています。
男性よりも女性の方がホルモンの変化が表れるため、自律神経失調症になりやすいと言われています。
原因5:栄養の偏り
栄養不足だけで自律神経失調症になることは、ほとんどありません。しかし、過度なストレスの上に栄養不足があると、自律神経失調症になる可能性もあります。
自律神経失調症という病気はない!?
人によってさまざまな症状が現れ、原因も異なる自律神経失調症ですが、この病名は欧米、そして日本でも正式な病名として認められていません。
日本心身医学会では「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」と、定義しています。
参考資料:②(参考資料は記事の最後に記載しています。)
自律神経の働きが乱れて心身の不調が現れたとき、検査をしても病気が認められない症状のことを自律神経失調症といいます。
そのために、自律神経失調症の診断結果は医師によって変わることがあります。同じ症状の患者さんに「自律神経失調症」という診断される医師もいれば、その症状が起きている器官や臓器に注目したうえで、具体的な病名をつける医師もいます。
治療方法も決まっていない、そして症状も原因も人によって異なる・・・とても厄介な症状です。このような話を聞くと、治るのかなと不安になっちゃいますよね。
しかし、自律神経失調症は自分で治すことができます。原因を特定して、ひとつずつ改善していくことで症状が緩和されていきます。
自分のペースで、根気よく改善していくことが大切です。
自律神経失調症からのメッセージ
あなたを悩ませている自律神経失調症ですが、実はあなたの身体に大切なメッセージを送っています。そのメッセージは、あなたの身体を労わり大切に扱ってくれています。
「これ以上頑張りすぎてしまうとあなたの命が危険だから、今の生活を変えたほうがいいですよ」とメッセージを送ってくれているのですね。
それでは、どうして私はこんなに苦しい思いをしているの?と考えてしまいますよね。そのように考えてしまうのも無理はありません。
自律神経失調症は、あなたを守っていた
ここでは少しだけ、あなたが自律神経失調症を発症してしまったのか考えてみましょう。
どうして自律神経失調症は、あなたを苦しめるのでしょうか?
自律神経失調症は頭痛や肩こり、冷え性、吐き気、精神的な落ち込みなどの辛い症状を引き起こします。
しかし、これからの症状はあなたの命を守るために起きているのです。
あなたは家事や育児、そして仕事などで一生懸命頑張ってこられました。
しかし、もしかしたら自分でも気付かないうちに、その頑張りに限界がきてしまったのかもしれません。
自宅で家電製品を使いすぎたときにブレーカーが落ちるのと同じ状態です。
頑張った分、今はゆっくり休んで充電しようねと、あなたの身体を労わるようメッセージを投げかけています。
自律神経失調症は、頑張ることで疲労してしまったあなたの身体を修復し、健康な身体に戻そうとする正常な働きです。
メッセージを送ってくれていることに感謝して、これを機に自分の生活スタイルを見直しながら、ゆっくりと症状を改善させていきましょう。
(すきっと編集部)
コメント